絶対零度の鍵



後ろを振り返ると、おなじみの顔があった。



「兄貴じゃん、珍しいね、こんな時間に。」



「救急の夜勤明けだよ。卓こそ、予備校の帰りにしては早くない?」



少し疲れ気味な顔をしながら、兄貴が僕ににやっと笑う。



「失礼だな。おかんが五月蝿いからちゃんと出てるよ」



「で、何?寄り道?」



「うるさいなぁ。いいだろ、別に。兄貴こそ、家に帰るの?」



面白そうに訊いてくる兄貴を鬱陶しく思いつつ、訊ねる。



「あぁ、お母さんから卓の勉強見てやってって電話掛かってきたからさ。」



「はぁ?まじで?そんなこと一言も聞いてないけど」