そのまま、時が止まっているかのように、どちらもその場を動かなかった。
暫くして、僕は彼に近づいてみようと決心する。
足元が土なのか、アスファルトなのか、草むらなのか、よくわからないけど、物音がしなかった。
それで、僕はとても静かに、彼に近づくことができた。
あと数歩行けば、彼の傍にいける位の距離になって、僕は気づく。
彼の片手。
僕からは反対の手に抱えられている、一冊の本。
あぁ、あれは確か―
その本に意識を奪われていると、ふいに持ち主がこちらを向いたのがわかった。
つられて僕も目線を上げる。
「あ…れ…?」
僕は目を見開く。
「君は―」


