絶対零度の鍵



「…そうですが、何か?」


蓮貴は内心驚いていた。


広間の窓際、カーテンの脇という目立たない場所に立っていた自分を見つけたことすら不思議なのに、温度師という職業まで言い当てられたからだ。


上からマントを羽織っているため、道具は全て隠れて見えない筈だった。



「新しい温度師様ですな?いやいや、ご出身をお聞きしたかっただけのこと。私もかつてあの村にいましたんでさぁ」



老人は懐かしむように微笑んだ。


蓮貴はこの老人のことを知らないが、『あの村』という言葉に心惹かれた。



「そうだったんですか。私もちょうど今日、あの村のことを思い出しました。今もあそこの夕焼けは綺麗なんでしょうね。」



老人も嬉しそうに頷く。