目の前の役人が箱から鍵をひとつ、取り出すと、蓮貴の足元に跪(ひざまず)く。 丸くて固いそれは、何の色も映し出してはいない。 空間の王座への道を作り出す、始まりの鍵。 「どうぞ」 コトリ、音を立てて役人がその鍵を転がすと、薄暗く歪んだ扉が絨毯のように蓮貴の目の前に広がった。 蓮貴は一歩、足を踏み出す。 そこへ― 「詩尉(しい)様!」 静かな場が一変し、騒がしい音が乱入してくる。 「不届き者めが。今は師の任命式であるのだぞ!」 鍵を使った役人がいきり立った。