絶対零度の鍵

「温度師…」


取り残された翠が、ぼやりとその言葉を呟いた。



「もしかしたら…」



座敷にぽつんと座りこんだまま、翠は嫌な汗をかいていた。



蓮貴に渡した本の中に混じっていたかもしれない。と考えたからだ。



すぐさま立ち上がって、翠は家を出て走る。



蓮貴に訊いてみよう。もしかしたら知っているかもしれない。



もしかしたらまだ目を通していないかもしれない。



蓮貴だったら、万が一読んでいても大丈夫かもしれない。




様々な希望的観測が、頭の中に渦を巻く。



慌てて走ったせいで、足が靴にちゃんと入っていない。


まどろっこしくなって、翠は途中から靴を手に持って、裸足で走った。