そして、指名された者は、指名した者を父と呼ぶ。
血の繋がりはないが、能力の繋がりとしての親というわけだ。
だが、その名前を今、連貴は思い出すことが出来なかった。
―故郷に帰ったところで、知ってる顔はひとりもいないんだもんな。
蓮貴は赤く染まってきた雲をひとつ、指でなぞる。
温度師の一族は、温度師以外は普通の者だ。
寿命は百そこら。
温度師の名前は愚か、その人と形(なり)すら、誰も覚えてはいない。
だが、一族の誇りと栄光だけは、皮肉なことに衰えはしないのだ。
隔離されているかのようにして住んでいるこの場所さえも、代々我が一族にしか使用されない、特別な土地だと思い込んで疑わない。


