絶対零度の鍵



「どういうこと?」



右京が飛びつかんばかりに訊ねると、左京はふふんと笑った。


「実は灼熱の国でも鍵の紛失事件が起きてたんだ。しかも、あそこは鍵屋と城が近いからな、使者が紛失する距離がない。なのに、だ。使者は突然の雨と共に、真っ黒くてでかい鳥に襲われたと証言した。」



「黒くてでかい鳥…」


右京が神妙な顔つきで繰り返す。


「そして大雨と黒い鳥が雷鳴と同時に姿を消したときには、持っていた鍵がなかったと、な。」


「あぁーーーーー!」


右京が突然大きな声を上げた。


左京も鍵師も予想していたようで、びくっとなったのは僕だけだ。ずるい。



「いた、そーいえば、バタバタとうるさい羽音が雷のあと聞こえたわ…それに小鳥が漆黒のでかい鳥が雷鳴と一緒にいなくなったと言ってた。温度師が絡んでいるのはわかっていたけど…あの時だったのね…」


「多分、落雷に驚いて目ぇ瞑ってたから気づかなかったんだろうよ。相手は鍵を狙って、空の表情が変わるのを待っていたんだ。かなりの早業だったはずさ。右京はビビリだからなぁ」


はぁーぁとわざとらしく溜め息を吐いた左京の頭をパコンッと右京が殴った。