「来た」
暫くすると、右京は耳を欹(そばだ)てるような格好をして言った。
途端に、開いていたベランダの網戸から強い風がビュッと吹き込み、カーテンを舞い上げる。
「え、なに?」
無風で熱帯夜だなと思っていた。
予備校からの帰り道、風が吹いているなんて微塵も感じなかった。
なのに突然吹き込む、この風はなんだ?
部屋の壁に掛かるカレンダーがペラペラと乱暴に捲られる。
そして―
「?!」
網戸が自動ドアのようにスッと開く―
「左京…」
呟く右京の声と共に、部屋の中に入ってきたのは、一羽の白い鳩だった。
片翼の。


