絶対零度の鍵

そして、横たわる右京が無意識に抑える肩(―恐らく背中が痛むせいで)の手をそっと外させた。



それから右京の額に前足を当てて、うーんと険しい顔を(多分)した。



「随分と厄介な毒だったからの。地球での治癒は難しいかも知らん…応急処置が精一杯か…」



猫がそう呟き、くるぅりと空気を撫でるかのように前足を回すと、右京の辛く歪んだ顔が和らいだ。



それを確認すると、猫はこちらを振り返る。


休めの姿勢で居た僕は、びくっと姿勢を正す。



「…若いの。名はなんと言う?」



猫は、この部屋を自分の隠れ家として使用しているようで、右京が寝ているソファも、今しがた猫がぴょんと飛び乗ったレトロなテーブルも、付随する椅子も、埃ひとつ被ってはいなかった。



窓の隙間から漏れる光を鏡で反射させることで、薄暗い室内は照らされていて、僕はちょうど鏡とテーブルの間に立っている。




「えっと…望月卓毅といいます」



答えると、猫は軽く何度か頷いた。



「そうか。タクミか。良い名だ」



人間の姿している右京より、猫の姿しているじーさんの方が話しがわかる気がした。