絶対零度の鍵

「あー、悪ぃ、尭。淳と食ってて。俺、ちょっと行くとこあるから。」


僕はそんな2人にはお構いなしに、教室に背を向けて今来たばかりの道を戻る。


「え!?ちょっと、卓毅?!」


心なしか焦ったように僕を呼ぶ尭の声に、僕は振り向きもせずただ片手を上げてばいばいと振った。


「…はーあ」


ポケットに手を突っ込みながら、僕は図書室までの道のりを一人、歩く。

うちの学校の図書室は地下にある。

1階にある購買を通り過ぎて、その奥にある階段を下るとそこが図書室だ。

7月の真っ盛りな今、校舎の地下はひんやりとしている。

図書委員の子に言って借りた鍵で合鍵を作って持っている僕は、いつでも勝手に入ることができる。

ま、昼休みは大抵開いてるんだけど。

そう思って、扉に手を掛けると。


「…?あれ」


開かない。

珍しいな。

首を傾げて、慣れた手つきで立て付けの悪い扉に鍵を差し込み、少し浮かせてやると、鍵が奥まで入ってカチリと回った。