絶対零度の鍵

教室に戻ると、また人だかりができている。

右京は弁当をおかんから持たされていたみたいだけど(なんでか僕のはいつも通り作ってくれなかった)、貢物が沢山あるらしい。


「右京ちゃん、イチゴミルクあげる!」


「右京ちゃん、これ購買のコロッケパン!中々手に入らないんだよ!」


食べきれないだろうって思うんだけど、右京はにこやかにそれを受け取っている。

そうだった。

右京の胃袋は半端ない。

育ち盛りの僕なんかよりずっと食べる。

食べなくなるのはお腹がいっぱいになったからではなく、他のことに興味が移った時だ。

結論。

彼女の満腹中枢はイカれている。


「卓毅!」


入り口の引き戸に寄り掛かってその光景を眺めている所へ、特進クラスの尭がやってきた。


「一緒に食べよ!」


手にはお弁当の包みとマイボトルを持っている。


「お、田中じゃん。お前も健気だね。特進クラスは校舎も向こう側なのに遥々こっちにくるなんて、さ。友達いねぇの?」


溝端がからかう。


「そんなわけないじゃない。淳くんは黙ってて」


尭がギロリと睨んだ。