絶対零度の鍵

「ほらー、何やってるんだ?散れ散れ。」


人畜無害な僕が、予想外(通り?)な展開で注目の的になっていると、予鈴と共に数学の前田が迷惑そうに教室に入ってきた。


「望月ぃ、ちょっとの間、命拾いしたな。放課後、体育館裏に来いよ。逃げたら許さねー」

けっ、と悔しそうに小松が僕に背中を向ける。


だから、何の戦いなんだって。

そしてそのベタな捨て台詞おかしいって。


僕はまださっきの姿勢を崩さず、小松の去り姿を微動だにせずに見つめた。


「お前、苦労を背負い込んだらしいな」


溝端の面白半分の同情に、今更気づいたんですか、と言いたくなる。


「ねぇ、今の何?クミ」


落ち着きを取り戻した教室内。


教師が来たことで周囲の生徒たちはそれぞれ自分の席に着こうとしている。


呪いが解けた僕が振り返ると、元凶の右京はきょとんとした顔で僕を見つめていた。


「男同士の決闘、みたいだよ?」


げんなりした表情をした僕が、何も言えないでいると、溝端がクスッと笑って右京に教えた。


「なにそれ!面白そう~!」


異世界の住人は、きゃらきゃらと笑った。

席に着きなさいと、前田に注意されるまで。

おかげで僕の耳には右京の笑い声が授業中ずっと耳について離れなくなった。

ほんと、ツイてない。