絶対零度の鍵

一体何が正しくて何が間違っているのか。

何が現実で何が夢なのか、段々わからなくなってきたぞ。

こんな風にして、人は現実離れして、いつしか右京のような浮世離れした存在になるのかもしれない。


「望月ー羨ましすぎるぞお前ぇ。」


人生の悟りの境地に入ったような面持ちで僕が物思いに耽っていると、廊下から野太い声が掛かる。


「小松。」


僕の代わりに、溝端が返事をした。


小松、と呼ばれた男はがっしりとした体格の大男で、柔道部に入っていて、隣のクラスだ。


余り仲良くはないが、ちょっと面倒な知り合いだ。


頭が悪いせいか、力ずくで何でもかんでも解決しようとする傾向がある。


「何の話かわからねーよ」


ここは、軽くかわしておいた方がいいだろう。


「とぼけたって無駄だぞぉ。あの美しい転校生、お前んとこにいるってきいたぞぉ」


あーめんどくさい。


内心舌打ちしながら、自分の腕を見る。


僕は腕力には自信がない。