絶対零度の鍵

「えーっと、今日はまず転入生を紹介するわね。」


転入生、というワードに、クラス中がざわざわ騒ぎ出す。


「静かに!ちょっと時期はずれなんだけど、色々事情があって。留学生の子で日本語はぺらぺらだから安心してちょうだい」


須美子ちゃんはふふふと笑うと、教室の扉の向こうに手招きをした。


興奮気味な声があちこち飛び交っていたのに、右京が教室に入った途端、水を打ったような静けさになった。


「自己紹介をしてくれる?」


須美子ちゃんの指示に、右京はこく、と頷き、花が咲き誇ったような笑顔で、


「右京です。よろしくお願いします」


と言った。


僕は自分の中でツッこむ。


名字は何ですかー?って。


だけど、うちのクラスには誰もそれを質問してくれる人がいない。


それ位、右京は人間離れして美しいってことだ。


男だろうが、女だろうが、右京の美しさは見惚れてしまう。


だけど、夢見る少女ちゃんで、怪力だぜ。


半ばヤケクソになりながら、非現実的な現実を受け入れる他、選択肢はないんだな、と今更ながら思った。


何故か物事の流れが、右京側にあることを、僕はとっくに気づいているのだ。