絶対零度の鍵

「モテ期はいつ来るかわからないからなー」


茶化すように言う溝端を少し憎らしく思う。


何故なら、こんな僕とは違い、溝端の顔は整っている。


背だって僕より10センチ位高いし、ストレートの灰色がかった髪は僕にとって喉から手が出るほど羨ましい。

勉強だって出来るんだよ。悔しいけどスポーツも大方こなせる。

今人気の眼鏡男子だし。

しかもおちゃらけた性格だから、男女問わず好かれるタイプ。

去年入学して同じクラスになって知り合ったが、今年のバレンタインはすごかった。

だけど、甘いものが嫌いな溝端。

そんな面もちょっとかっこいいかな、なんて同姓でも思ったりする。

僕は、こいつが女に困っている場面を見たことがない。

来るもの拒まず、去るもの追わず、だ。

ま、要はタラシだ。

入学から今まで一体何人と付き合ったか…いやそもそも付き合っている、なんて定義はコイツにはないんじゃないかな。

言い返す言葉も見つからず、完敗な気分ではぁ、と溜め息を吐いた所で、


「おはよう!ホームルームを始めます」


担任の須美子(すみこ)ちゃん(52歳)が、元気良く教室に入ってきた。