絶対零度の鍵

「モテる男は辛いねぇ」


席に着いた途端に溝端が冷やかした。

机の脇に空の鞄を掛けると、僕は呆れ顔で奴を見る。


「俺がモテてると思ってるワケ?」


自慢じゃないが、僕はそんなに良い顔はしてないと思う。

背も170ちょっとで友達の中じゃ低い方だ。

髪も兄貴みたいに真っ黒じゃなくて、少しだけ茶色で癖っ毛。

猫みたいにはねる。


成績も良くない。

運動だけは胸を張ってできると言える。

告白なんてされたことないし、騒がれたことだってない。

去年の文化祭でも、他校からお声が掛かる、なんてことはなかった。

バレンタインは毎年尭とおかんはくれるけど、他からはない。

ラブレターだって小学校で一度、何かの間違いでもらったきりだし。


つまりは、僕のモテ要素はゼロだ。