絶対零度の鍵

「…ここは、病院だよ。僕は君が怪我しているのを見つけて連れてきてあげたんだよ。」



多少ムッとしたので、この際美人なんてことは忘れて、僕の立場ははっきりと恩着せがましく伝えたい。



しかし、眉間に皺を寄せ、細められている彼女の目は、僕の言葉を聞いてもなお元に戻らない。


「…びょういん…って何?」


は?


今度は僕が怪訝な顔をする番だ。


「君…わからないの?病院っていうのは、怪我をしたり具合が悪い人が医者に治療してもらうところだよ。」


今時病院の意味を説明しなくちゃならない場面に出くわすなんてないと思っていたけど。

小さい子だってきっと知っているだろう。

注射をされたり、苦い薬を飲ませられたり、冷たい聴診器を当てられたりする嫌な場所だってことを。


もしかしたら日本語ぺらぺらだけど病院のない国に住んでいる外人で、来日したばっかとか?


そこまで思考が彷徨ったところで、彼女があぁ、と小さく頷いた。


「治癒院のことか…」


いやいや、どこだよそれ。