『彼女の仕事を、俺は理解してきたつもりです。ただ、それが…逆に不安にさせてしまったのかもしれません。ただ…仕事を優先にさせるだけじゃなくて、もっとしてやれることがあったんじゃあないかって…後悔していました。本当は…、彼女が働く姿を全く知らない癖に、大変だろうって…言葉だけで共感して。だから…、火災が起きた時、こっそり…見に行ったんです。潤が…居るかもしれないって。もしかしたら、俺の存在に気づくかもしれないって…、どんなカタチでも、また…会えたらって。淡い期待…でしたけどね。』
『見向きも…しませんでしたよ。いや、気づいても…気づかないフリはしたでしょうけど。』
『この前の火災現場に居たのは…本当に、ただの偶然です。警察が周辺地域を警戒していることくらいは分かっていました。けど、あの日…あそこに出向いたのは、近くの…ラーメン屋。あそこが、初めて二人でデートした所だったから、感傷に…浸りたかったのかもしれません。ちょうど…店に向かう途中でした。』
『……すみません、偶然だと言っているのに…矛盾してますね。違うって否定したら…、柏木さん、貴方は俺を…ますます見逃したくなくなるでしょう?』
一切…メモなどとってはいないのに。
八田の挑戦的な瞳が…俺を試しているようで。
ハッキリと…そのやり取りが、思い出される。
「切っても切れない縁… ね。」
それは…俺に限ったことではない。
ただ、すれ違っただけの…人間でも。
意図的な…出会いでも。
万人に共通するもの…なのだ。