て・そ・ら



 二人で斜面になった草地に腰を下ろしていたら、太陽はぽかぽかとあたたかくて気持ちがいい。

 そんなわけで、あたし達は写生もせずにおしゃべりをしていたのだ。

「ヒカリちゃんは好きな男の子がいるの、サッカー部に?」

 あたしの問いに、彼女はやだ~!と笑う。

「好きな男子っていうか、彼氏です!夏前から付き合ってるんですよ~!」

「・・・・・・へえ」

 そうですか。すごいね、1年生。心の中で呟いて、あたしは彼女が校庭の端で小さく見える男子を指差して説明しているのを聞いていた。

「サッカー部って人気があるんでしょ?ファンの子達もいるみたいだし、心配とかなるの、やっぱり?」

 好奇心からそうきくと、彼女はいえいえと手を振った。

「あそこにいるのは殆どが野球部のファンですよ!ほら2年7組の磯辺先輩の追っかけです。優実先輩も格好いいって言ってましたけど、あの人マジで格好いいですよね~!あ、サッカー部にもファンはいるみたいですけど、一応ね、でも私の彼氏はもてるタイプじゃないんでその点安心」

「ふうん」

 7組の磯部・・・うん、確かに優実からその名前は聞いたことがあるような気がする。

 だけど結構な学生数がいるこの高校で、同学年とはいえ2組のあたしが7組の男子の顔を判別できることなんて、きっと卒業するまで無理だろうって思った。

 ヒカリちゃんが指差して教えてくれた野球部の磯部君とやらは、キャップで顔まではよく判らなかったけれど、すらりと背の高い体つきの良さげな男子だった。

 あれでイケメンだったら確かにもてるだろうなあ、というような。うーん、顔も見てみたい。だけどここからでは無理だよね。