て・そ・ら



 なんと、本当に風邪を引いてしまった。

 雨に濡れたのが問題だったのじゃあなくて、知恵熱じゃないの?自分ではそう思っていた。それか、ショック熱。ちょーっと情けないけど。まあでも多分、その全部が重なったのだろう。

 参加賞だったってショックと、雨に濡れたことと、面白くないことが続いたってこと。

「もう、どうして傘があるのに濡れて帰ってくるのよ、このバカ娘!」

 母親は仁王立ちになってあたしをすぐにお風呂へ入らせたけど、翌朝には38度を出してしまったのだった。

 仕事に行くから、ちゃんとお昼は食べて薬飲むのよ、そう言い残して母親が出ていってから数時間、ちょっとウトウトしていた。

 枕元に転がしたあたしの携帯には優実や1年の時のクラスで仲がよかったマコトちゃんからメールが入っていた。

 大丈夫?ちゃんとあったかくして寝ててよ~、とか、今日移動教室で居なかったからびっくりした~、とか。

 そうか、今日は化学があったんだ、と思った。

 化学も移動教室で、2クラス合同で授業を受けるのだ。優実は隣のクラスで文系だけど、化学のクラスは同じだったのだ。

 高校では部活でもクラスでもあまり仲の良い女の子もいなかったから、あたしは化学の時間はよく楽しんでいた。明るくて可愛い優実と一緒にいれるから。それに、彼女はとてもお喋りだし。

 よく考えたら横内が所属する男子硬式テニス部の情報だって、多くは優実から入ってきてるんだった。練習はこんなことしてるみたいよ、とか、今日は近所の大きな公園のコートで練習だってよ、とか、今度また試合あるんだって、とか。