て・そ・ら



「今日はもう帰るねー」

 あれ?と丁度部室にきたばかりだった優実が首を傾げた。

「七海もう帰るの?まだ4時半じゃないよ~?」

 あたしは鞄を肩にかけながら笑う。だってどうせ今日も雨だからさ、って。夕方はこないと思うし、ちょっと風邪気味だから家に帰るね、って。

 風邪なんて引いてなかったんだけど。

 だけどそれなりに・・・いや、かなり凹んでいたので。
 
 靴箱を通過して、一瞬迷う。細々とした雨だった。景色が白く煙ってるけど、霧雨程度だ。これくらいなら傘、ささないでもいいかなって思ったのだ。ちょうど濡れたい気分でもある。凹んでるときにはもういっそのこと底の底まで行きたい、そんな自虐的な気持ちがあったのも事実だし。

 いいや、このまま駅まで行こうっと。折りたたみ傘は鞄にしまったままで。

 あたしは傘をささずに歩き出した。

 あーあ、落選だ。

 あーあ、佳作にもひっかからなかった。

 一面の青空に光る紅葉。長い時間をかけたあたしの絵。

 ・・・あーあ、あたしの青空・・・サヨナラ。

 ぐぐっと悔しい気持ちが湧き起こる。だけどそのままで、ぶすっとした仏頂面のままで歩いて行った。

 校門を出てそのままいきなり坂道を上がる。しばらく学校の外周にそってあるいて、信号を3つ。そうしたら駅前の通りに出るのだ。

 あたしは歩く。雨の中。腹立たしくて、泣きそうで、すごくブサイクな顔してたと思う。