て・そ・ら



「そう」

「それであのため息?」

「あ、うん、それもあるけど。最近ちょっとついてなくてね」

 ・・・君とも席が離れちゃったしね。

 まさか、そんな事言えないけどさ。

 話してる間に駅についてしまった。傘をパッパと畳みながら、横内が定期券をさぐる。

 うーん、どうしよう。まだ一緒にいていいのかな。それともここで離れるべき?

 あたしがウダウダとそんなことを考えてると、前で横内が、あ、と言って携帯電話を取り出した。

「電話だ。じゃあな、佐伯。もうすぐ電車くるぞー」

 携帯を開きながら、彼はあたしにそう言う。残念な気持ちを押し隠して、あたしはうんと頷いた。

 ・・・ちぇ、電話か。

 定期を手にして滴が垂れる傘を避けながら改札を通る。その時、後ろから声が飛んできた。

「あ、そうだ、佐伯!」

「え?」

 慌てて振り返ったあたしに向かって、改札の向こうで横内が手を伸ばしていた。

「やる!」

「え、え?」

 何を?