て・そ・ら



 隣の人が起こしてくれるなら、そのまま起きていることも出来るに違いない。それに、隣の人っていわなくてもいいか。だってしっかりチェックしたもん。今の横内の隣は、竹崎さんだ。

 生まれつきだって言っていた茶色の細い髪がサラサラの、クラスの中でも人気のある女の子。色白で、優しくて。八重歯が可愛い女の子。

 ・・・だから、起きてるのかな。もしかして。竹崎さんが隣って、嬉しいのかも。

 あ、また凹んできた。

 あたしは何とか顔をあげて、つとめて明るい声で言った。

「良かったね、怒られることも少ないよね。横内君は寝てても勉強もついていってるけどさ、あたしはへましちゃったからなあ~・・・」

 いいよな、眠りん坊。君は数学の朝学習には行かなくていいのだろうし。あたしは若干のやっかみもまぜてそう思う。

 これから実力テストまで2週間、毎日・・・。ううー、たまったもんじゃないよ~!

「成績落ちると顧問にめちゃくちゃ絞られるから・・・」

 ぼそっと横内が言う。あたしはそれにも驚いた。へえ!って。運動部って、練習もきつい上に成績の管理もされるのか、って。でもそういえば、横内は寝てるけれども予習はしてるみたいだったもんね。数学だって、ちゃんと。

「そっか。大変なんだね、運動部って」

「まあ、仕方ないよな。学生の本分は勉強だってのが顧問の口癖でもあるし」

「へえ」

 横内が傘をくるりと回してあたしを見た。

「佐伯、朝学習に参加?」