て・そ・ら



「ああ、休憩だ~!」

 優実がそう言って廊下へ出て行く。あたしはそれを視界の端っこに捉えながら、休憩という単語に惹かれてしまった。

 だから絵筆をおいて、お菓子とお茶を取る。

 顧問が特別にって置いて行ったお菓子だった。たまにしかこないが、最近は粋なことしてくれるよねえ~って皆で盛り上がったものだ。

 おお、いちごポッキー発見。あたしは嬉しくそれを引っつかんで、廊下へ出た。

 今日もキラキラと眩しい夕方の校舎の中、廊下から中庭を見下ろしている優実の影が長く廊下にのびている。

 彼女の細くて長い髪の毛が黄金色にキラキラと光っていた。あたしはそれをちょっとだけ目を細めて眺める。

 ・・・この夕焼けの中なら、あたしだってもしかして、可愛く見えるのかも。

 もしかしたら―――――――――

「ほら七海!練習してるよ、男テニが!」

 あたしに気がついた優実が振り返っておいでおいでをしている。あたしは苦笑して、彼女に近づいた。今更何をいってももう訂正は出来ないんだしね、そう思ったのだ。

 諦めて、色んな情報を貰おうって。

「試合が近いって聞いたよ」

 そう言いながらお茶を飲む。すると実に嬉しそうな顔をした優実がパッと振り返った。

「おおー!何よ何何、七海本当に興味があるんだね~!よっし、そうこなくっちゃ!これって展覧会終わったら告白のノリよね?」

「・・・いや、どうしてそうなるのよ」