既に来週の展示会にむけて、クラブ内はほとんどの作品が完成していた。あたしももうちょっとで終わるってところまで来ている。
絵筆をもつ右手にはマメ。それくらいに強く握ってしまっていたのだ。ちょっと力を緩めないとね。
ヒカルちゃんはゴクゴクと音をたててお茶を飲む。それから、誰にきかせるわけでもないようなことをダラダラと話しだした。
「本当にこの学校って夕日の校舎ですよね。もう眩しくてカーテンあけてられないもん。運動部ってこんな強烈なオレンジの中で、よくスポーツできるなあ。ボールみえるのかな、ちゃんと」
「そりゃ見えるでしょ」
横から突っ込んだのは、優実だ。
「見えなきゃどうやって練習するの。あたしだってちゃんとボール見えてるわよ」
「先輩はバレーボールでしょ!そりゃ体育館の中だから見えるだけです!」
ヒカルちゃんが唇を尖らせて抗議する。そういえば、運動神経も抜群な優実は、バレーボール部と掛け持ちしているのだった。といってもメインはこっちで、休みの日などにピンチヒッターで試合に出られるようにという練習をする程度、らしいのだけど。
少しだけ、ヒカルちゃんがカーテンを開ける。指先でつまんであけたその5cmほどの隙間から、全てのものを一色に塗りつぶしてしまうような強烈なオレンジ色が部室の中に忍び込んできた。
「こらー!見えないでしょ!」
「しめてしめて、眩しい~!」
途端に部室内には罵声が飛び交う。ヒカルちゃんは慌ててカーテンを元通りにし、それからぺろりと舌を出した。



