ここは重なるように・・・主点がここだから、斜めに上がって・・・それで、ここは影で色を落とす・・・。
子供の手みたいな、小さなきざきざ。瞼の裏に浮かんだその形をなぞってうつしていく。
線が目の中で踊る。
頭の中では色が勝手についていく。
ここは、ハッとするほどの紅色にしよう――――――――――――
「・・・えき」
そうそう、この構図はいいかも。今日部室いったら早速書き換えよう。今からでも何とか間に合うはず―――――――・・・
「佐伯!」
先生の声が聞こえてハッとして顔を上げる。同時に、机に軽い振動を感じた。
「佐伯、こら、ぼーっとしてないで早く答えなさい」
「は・・・はい」
緒方先生だけでなく、クラスの何人かが振り返ってあたしを見ていた。・・・うわ、もしかして、当たってる!?
ぶわっと全身から汗が吹き出たのがわかった。ええと・・・ええと!?今どこの話してんの!?ザッと教科書に目を落とすけど、落書きしている間に授業は結構すすんでしまったらしくどこを見ればいいのかも判らなかった。
口を開けど焦るばかりで答えないあたしを見て、緒方先生が眉間に皺を寄せる。
やば―――――――――
「・・・オームの法則」
へ?



