タンタンと足音を立てて階段を上る。もうすっかり馴染みになってしまったこの屋上行きの階段が、今では愛しく見えてしまうほどだ。
男子テニス部は試合があるらしいのだ。だからテストが終わった今日からは、昼も夜も練習があるって横内が言っていた。
会えないのが寂しいとか、まだ思えない。それほど付き合いが深くなっていない今は、携帯で毎日メールをやり取り出来て、たまに夜に電話が出来るだけでもあたしは十分すぎるほどの幸せを感じていたのだ。
こっそり見れたら、それでいい。
キンキンに冷え切ったドアを開ける。今日で屋上解放も終わりだな、そう思いながら足を踏み出すと、あ、と声が聞こえた。
「来た来た。もう今日はこないのかと思ったー」
横内が、そこにいた。
「え、ええ!?あれ?部活は?」
あたしは驚いて慌てて彼に駆け寄る。だって昼の練習があるって、テストの後に―――――――――――
横内はテニス部のジャージの上にコートを羽織って、ニコニコと笑っている。
「コートの問題で、なくなったんだ、昼練。弁当食べたらここに来るかなって思って待ってたけど中々こないから、もう戻ろうかと思ってたとこ」
「あ、そうなんだ~!メールくれたらよかったのに」
この寒い中、待ってたんだ!?それは嬉しかったけど、あたしをたくさん申し訳ない気持ちにさせる。鼻の頭を赤くした横内は一体いつからいたんだろうか。
ああ、もう~!お弁当たべたらすぐに来ればよかった。優実と戯れてないでさ!



