て・そ・ら



 だけどそれは書かなかった。だって今でもあたしは、屋上からこっそりと横内の部活動を覗き見るのが好きだったのだから。

 音を立てて携帯をとじ、鼻歌まじりで部室に向かう。

 美術部は今日で年内の活動は終了。今日は皆で部室で一緒にお昼を食べるってことになっていた。


 ちゃんと部員全員でのお弁当タイムも終わらせた後、部室の大掃除もして、美術部は解散となる。

 優実には横内と付き合うことになったって話していたから、彼女はキラキラした目であたしを見て笑っていた。

「七海、クリスマスのご予定は~?」

 酔っ払いの絡みってこんなのかな、と思うようなねっとりとした絡み方の優実にあたしはパッパと手を振った。

「ないよー。だって男テニは試合あるらしいし」

 え!?途端に表情を変えて優実が叫んだ。

「マジでー!?どうしてこんなクソ寒いときにテニスなんてするのよ!?高校生でしょ、クリスマスは彼氏彼女とお祝いしたいでしょうが!」

「・・・あたしに言わないでよ」

 だって高校2年生なのだ。クラブでは主力であるはずの私達、そりゃあ恋愛よりも部活を優先するのは正しい姿なんじゃないの?

 あたしのそのセリフに彼女は折角の可愛い顔をくしゃっと顰めた。

「そんな法律ないでしょー!もう!」

 人のことなのに、ぷんぷんと怒っていってしまう。あたしはそれを苦笑しながら見送って、さて、とマフラーを巻きなおした。

 屋上に、行こう。

 それから今年最後の横内ウォッチをしようっと。