10年越しのコクハク

こんな至近距離で見つめられて、息をすることすら忘れそうだ。

指先から温もりが伝わってきて、ドキドキする。

こんな場所、さっさと出なきゃ。

「本当にありがと、和樹。商談の件だけど、改めて契約書を作ってくるね」

ほとんど乱暴に書類を拾い上げると、カバンに押し込んだ。

「じゃあね、和樹。また……」

立ち上がり、カバンを取ろうとした瞬間、和樹に腕を掴まれてしまった。

「待てよ、美希。そんな簡単に帰すかよ」

怖いくらい強引にわたしの腕を掴んだまま、壁際へと追い込む。

「手、離してよ……」

「はい、離したよ。でも、ここからは逃さない」

手を離してくれた和樹は、代わりにその手を壁に付いたのだった。

これじゃあ、逃げる隙もない。

「美希、ずっと会いたかった。高校生の頃から、お前が好きだったから」

わたしを見下ろす和樹は、口角を少し上げて笑みを浮かべている。

「ホントに……?だって、そんな素振り全然無かったじゃない」

逃げ場を失っているのに、ときめくのは何でだろう。

ほとんど和樹に支配されてる……そんな状況すら、心地良く感じる。

「あの頃は、ガキだったから。美希に告白する勇気が無かっただけ。拒絶されるくらいなら、友達でいたかったんだ。だけど……」

「だけど?」

だけど、何?

その続きを早く聞きたい。