あなただけを見つめてる。



もしかして、ほんとに飲み物おごってくれるつもりなの?



「向日くん、そんな悪いよ……」



私は逃げ腰になりながら胸の前で両手をふって拒否する。


だって、私なんて全然大したことしてないのに。


すると、向日くんは自販機に小銭を入れはじめる。


あのー、向日くん?


私の話、聞いてますか?



──ガシャン!ガシャン!



自販機の取り出し口にペットボトルが落ちてくる。


向日くんはそこに手を突っ込み、その手にはオレンジ色のパッケージのペットボトルが2本。



「はい、葉月。これ、俺のオススメだから」



そう言って、向日くんはニコッと笑いながら、そのひとつを私の胸の前に差し出してくれた。


反射的に私はそれを受け取ってしまったけど。



「じゃ、俺ちょっと隣のクラスの友達んとこよってくからまたあとでな!」


「え?ちょ、むか……」



呼び止めようとしたけど、向日くんは軽快な足取りで素早く行ってしまった。



「…………」



ひとり取り残された私は、手元の冷えたペットボトルを見つめる。


向日くんが“俺のオススメ”と言って私にくれたのは、オレンジサイダーだった。