──その時。
私の前の席の椅子がガタンと音を立てて。
そちらに目を向ければ、そこには綺麗な黒髪のロングストレートが目に入ってきた。
あれ?この子って、たしか……
「緑川、そこの席なんだ?よろしくな」
私がその子の名前を思い出す前に、隣の席の向日くんが緑川さんに声をかけていた。
緑川さんは、一瞬だけ向日くんの方をチラッと見ると。
「あー、よろしく」
聞き取るのが難しいくらい小さな声で一言そう言うと、またすぐに何事もなかったみたいに前を向いてしまった。
「…………」
緑川さんて、あからさまに誰とも必要以上に関わろうとしてないよね。
人とかかわるのがめんどくさいから?
それとも……。
もしかしたら緑川さんも過去に何かあったの……?
なんだか緑川さんのことは他人事とは思えなくて、すごく気になるよ。



