“いいなー。あの子、向日くんの隣じゃん”

“あたしも向日くんの隣の席狙ってたんだけどなぁ。残念すぎるー”



どこからかうらやむ声が聞こえてきて、ハッとした。


そうだよね……。

女子から人気がある向日くんの隣の席なんて引き当てちゃったら、ねたまれる要因にしかならないんだ。


目立たず、平和な日常を送ることを望んでいる私にとって、向日くんの隣の席だということはマイナスにしかならない。


それに、向日くんには私のメガネがダテメガネだってこともバレてるのに隣同士なんて、なんか気まずいよ……。



「葉月?どうかした?」



うつむき加減な私に、向日くんが顔を覗き込んできた。



……わっ!


顔っ!


顔、近いっ!!



大きな目力ある瞳に見つめられて、私の心臓は飛び上がりそうだった。