「……なんで、なんで昇なんだよ!昇が何悪いことしたっていうんだよ!なんで昇がこんな目に合わなきゃなんねぇんだよっ!あの時、車道側を歩いてるのが俺だったら、昇はこんなことになんなかったかもしんないのに。サッカー選手になるのが夢だっていつも言ってたのに。これからたくさん、やりたいことだってあったはずなのに……なんでなんでって、四六時中、そんなことばっか考えてた。飯も喉通んなくて、夜も眠れなくて。ずっと泣いてばっかいた」



背を向けたまま、そう話してくれる朝陽くんのその声は震えていた。



「俺だけじゃない。父ちゃんも母ちゃんも。じーちゃんもばーちゃんも。みんなの心にぽっかり穴が空いたみたくなって。あの日を境にみんなから笑顔が消えてなくなってた……」


「…………」



私は嗚咽ももらして泣きじゃくっていた。


気付かなかった。全然わからなかった。想像もできなかった。


朝陽くんが、過去にこんなに辛い経験をしていたなんて……。



「でも、ある時、夢に昇が出てきたんだよ。夢の中の昇は、俺に向かってこう言ったんだ。“笑ってよ、兄ちゃん”って」


「……っ」


「だから、俺は、昇が心配しないようにどんなときでも明るくいよう、笑っていようって思った」


「…………」


「それから、昇の分まで精一杯生きるって決めたんだ。悔いが残らないように、一瞬一瞬を大切にしようって」


「…………」


「だから、葵にも。一度きりの人生、後悔ないように生きて欲しいんだ」



朝陽くんは泣きながら、私にそう言ってほほ笑んでくれた。



“どんなときでも楽しんだもの勝ち”



そうだよね、私、後悔したくない。


私はコクンと頷く。



「ありがとう、朝陽くん」



それから、昇くんのこと、私に話してくれてありがとう。