“昇っ!?昇っ!大丈夫か!?今、救急車呼ぶからなっ!!”



「俺は目の前で血だらけになって倒れている昇を前にパニックだった。だけど、昇を助けなきゃ!ってその一心で、“誰か!救急車を呼んでください!”ってそう何度も何度もひたすら大声で叫んでたのを今でもはっきり覚えてる……」


「…………」



どうしようもなく、胸が苦しい……。


苦しくて、苦しくて。


だけど、朝陽くんはこの何十倍も。何百倍も。何千倍も。


きっと、私が想像できないほどの苦しみを経験したんだと思うと、涙があふれてとまらなかった。



「救急車を待っている間、昇はまだ意識があって。そのときに昇が俺に言ったんだ。“……兄ちゃんは、大丈夫?”って」


「……っ」


「あんな状態のときでも自分のことより俺の心配なんかしてくれてさ、昇はほんと優しいヤツだったんだ。俺の自慢の弟だったのに……」



朝陽くんは、私に背を向け、鼻をすすった。


その肩が小刻みに震えているのがわかって、私は余計に涙がこみ上げてきてどうしようもない。



「“俺の分まで生きて……”それが、昇の最後の言葉だった……」


「……っ」