「さっき一緒にいたのって、葵の元カレ?」


「……っ!なんで、そのこと……。もしかして、聞いてたの?」



葵は一瞬にしてバツが悪そうな顔になった。



「……ごめん」



俺は肯定の意味で謝る。



「……そっか。あの話、聞かれちゃってたんだ」


「葵がダテメガネかけてる理由がやっとわかったよ」



何か人より優れたものがあるヤツは、いつだって注目の的で、何もしていなくたって目立つ。


容姿に恵まれてる葵が女子に人気がある男と付き合ったことで、余計に女たちの“嫉妬心”を煽り、それがイジメへと発展した。


だから、葵は自分自身を守るために、少しでも目立たないようにしようと地味でいることに決めたんだよな?



「葵の気持ちもわかるけど、それってやっぱなんか違う気がする」


「……っ」


「葵はこれからもずっと今のままでいいの?」


「…………」


「大事なのってさ、人からどう思われるかじゃなくて、自分がどうしたいかだと思うんだよね」


「…………」


「葵は、どうしたい?」



その時だった。



──ヒュードーーン!!



まるで俺たちの話を遮るようなタイミングで、夏の夜空には花火が打ち上がった。