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ヒグラシが鳴く夕暮れ時。
【夏祭りの日、絶対、浴衣着てきてね!】
向日くんから、ラインでそう念押しされて。
この前、風香と一緒に買いに行った浴衣に今日初めて袖を通した。
私の浴衣は、ヤマブキ色の帯に、淡い水色地に黄色と淡いピンク色の向日葵が咲いていて。
風香の浴衣は、紫色の帯に、白地に、青と紫の紫陽花が咲いている。
ヘアスタイルは、風香に長い黒髪を三つ編みカチューシャでアップにまとめてもらって、風香とおそろいだ。
履きなれない下駄をカランコロン、と響かせながら、私たちは待ち合わせの神社へと向かう。
「それにしても、赤点王の土屋が本当に全教科60点以上とるとはね」
風香はうちわで扇ぎながらそう言って苦笑い。
「土屋くんも、やればできるってことじゃない?」
「それなら、普段から本気出して勉強すればいいのにね」
そう、私たち4人全員、無事に全教科60点以上とることができて、今日は約束の夏祭りの日なのだ。
「それより、風香。やっぱりメガネかえして?」
さっき、風香の家でヘアスタイルを作ってもらっているときに、“せっかくの浴衣なんだし”って風香に取り上げられちゃったんだ。
でも、やっぱりいつもかけてるせいか、ダテメガネがないと落ち着かなくてソワソワしちゃうんだよね。
それに、今日に限ってダテメガネしてなかったら、向日くんに気合いが入ってることがバレバレって感じがして恥ずかしくて……。



