天才に恋をした

親父が、海老をつまみながら言った。

「そんなこと言っちゃったの~ヒロさん?」


ヒロさんというのは…母・広美のことだ。

母ちゃんは、せっせと海老をムいて、俺たちの皿に乗せる。



「え~。だってそんなに悪いことぉ?今どきは非処女で当たり前じゃない」

「ヒロさん、絶対仕事しない方がいいね~。セクハラですぐに訴えられるよ」

うふふふふ~と、母ちゃんが笑う。

土産のワインが回ってきたらしい。



母ちゃんの衝撃的な指摘を受けた後…

乃愛はぎこちない動きで二階にあがり、カバンとやたらデカい紙袋を持って降りてきた。



―帰る―

―お、おお―

―もう来ないから―




親父がしみじみと言った。

「真咲も17歳かぁ」

「苗ちゃんは、誕生日いつなの?」

「…1月」

「1月っぽい!」


どういう意味だよ。



「やぎ座でしょ?」

苗がポカンとしている。

「苗ちゃん、山羊っぽい!」


…否定はできない。

ただそれを認めると、俺は「カニ」っぽいことになるけど…



あの大きな紙袋は、プレゼントだったんじゃないのかな。

ちょっとだけ、胸が痛い。