天才に恋をした

迷っている暇はない。

人工中絶に反対するスピーチを仕上げて行く。


その過程もしっかり複数の面接官が観察している。

シュエも苦しそうな息づかいの下で意見を挟む。


「人工増加は、女性教育の観点から述べた方がいい」

「それでは人工増加のスピードに間に合わないと、言ってくる」

「代わりに死亡率の高さを…」

「人類の多様性の観点からは?」


あっという間の20分。

「苗に質問するなら、スピーチそのものをつつかない方がいい。感情を攻めるんだ」

「真咲に任せる」


微かにシュエの唇の端が上がった。



任せる。


今、確かにそう言った。


「任せとけ。苗は専門分野だ」



試験官を聴衆に見立てて、政治家のようにスピーチする。


苗のパートナーのスピーチから始まった。



「まず人工中絶が必要である社会とは、どんな社会かという点について述べたい…」


感じよく軽く見えるけど、隙がない。

上手い。

箱根で見た、寄せ木細工みたいだ。

ぴしりとハマって、色とりどり。

だけど、統一感がある。