天才に恋をした

「お前は何をしに行ってんだ」



車の中で、親父が噛みつく。

「恥ずかしい奴!」



後部座席にいる宮崎親子は、大人しい。



俺が誰より恥ずかしい。

よりによって、父親の前で「俺の女」って…



「すみません、宮崎さん。コイツ、サッカーのやり過ぎで脳が筋肉なんで!」

「脳が筋肉というのは、大変おもしろい表現です」


のんびりした声が聞こえてきた。


苗のじいさんでもおかしくない歳に見える。



日焼けした肌とは対照的に、髪は白い。

ひょろっとした体型が、苗とそっくりだ。



「本当に娘さんに失礼な事を言いまして…」

「『俺の女』という発言は、ご自身の女性性をこの子に投影し、なおかつ、それを守ろうとする自己防衛反応ですから、なんの問題もございません」






……




「なんて?」

と親父が聞いてきた。


俺に聞くな!