天才に恋をした

「ふざけんな!お前、自分のことしか考えてないだろーが!」

「俺はぜったいに後戻りしない!何もあきらめない!出来る出来ないじゃない。やって出来るようにする!」

「俺はそれが自分勝手だって言ってるんだよ!」


陸玖が、掴んだ手に力を込めて俺を揺さぶった。


「お前があきらめないことで、他の誰かがあきらめることになるんだよ!同じ努力で結果が違うのはしょうがない。でも努力してる時間は長いのに、結果に差があったら何て言えばいいんだよ!」

「もっと練習しろって言ってやれよ!」

「ふざけんな!馬鹿!」

「お前、教師かよ!?努力と結果が比例しないのは当たり前だろ!?」



陸玖が固まった。

陸玖の家は、教育者一族だった。


「ごめん」

と謝った。



腕をほどいた。

陸玖は黙り込んだままだ。


「俺より努力しろって言うんじゃなくて、誰よりも努力しろって言ってやれよ」


俺は呼吸を整えた。


「天才ですら、必死にやってんだよ」


陸玖は放心したように、俺を見ている。

「苗ちゃん…」


そう言って、また言葉が途切れた。