天才に恋をした


ひしゃげたソファーに座る。

陸玖も腰を下ろした。


「来年、留学する」

「…うん」

「中途半端なことをしたくないと思って辞めるって言ったけど、サッカー部には残りたい」

「受験勉強は?」

「する。だから、今までどおりの練習時間は…出来ない」

「それじゃあ、レギュラーは無理だよ」



そうか。

そういうことだよな。



「そうだよな…でも練習時間が短くなっても手を抜く気はないから」

「当たり前だよ」



陸玖は、素っ気ない声で言った。



沈黙が続いた。



「俺は信頼を裏切ったと思う…」

「『思う』じゃなくて、実際そうなんだよ」


陸玖らしい、感情を抑えた、それでいて厳しい声だった。


俺は言い直した。

「裏切った。謝って済むことじゃない。だけど『じゃあサヨナラ』なんて出来ない」



陸玖が顔を上げた。

「後輩になんて言えばいい?みんな必死でやってる途中で、抜けて行く奴のことを」

「バカだから勉強しに帰るって言えばいい」

「何だよ…それ…」


陸玖が胸ぐらを掴んで来た。