天才に恋をした


「『だから言ったろ』とは言わない事にしてるんだ」

陸玖がタオルを投げてよこした。




「言ってるのと一緒だろ…」

「お前、パスの回し方おかしいぞ」

「ああ。分かってるよ」



これは、けっこう深刻だった。

この前の試合はスタメンを外された。



「オンナって怖ぇーな」

ああ、言っちゃったよ。

いつも陸玖が言ってたセリフを。



「来ないように言えないの?」

「言ってる!もう何回言ってっか分かんねーくらい!」



俺はアタマを掻きむしった。

「乃愛が何考えてるか、わっかんねー」




久しぶりに、親父が帰ってきた。

「嫉妬でしょ」

と事もなげに親父は言った。



「だって、家に来ても俺としゃべるわけじゃねーんだぜ?」

「お前の事もそうだけど、苗ちゃんが学校とか家中の人間から好かれてるのを全力でカットしてるんだよ」

「俺はよくね?そしたら」

「なーに言ってんだ。真咲なんか、完全にカウンターアタックされてるよ」