リミットがきた。


大きく息をついた。


苗を離すのが、苦痛でしかたない。

苗はぐったりと、俺の腕の中で身を横たえていた。




俺は起き上がり、メガネを口にくわえて、苗を抱え上げた。

部屋を出て、苗の部屋に向かう。

苗をベッドに寝かせて、メガネをサイドテーブルに乗せる。



苗が涙目で俺を見ている。

溺れかかり、岸に打ち上げられたような顔をしていた。

唇が赤く腫れているのを指でなぞった。

乱れた髪が顔に掛かっているのを払ってやった。




これで終わりか…



胸がつぶれそうだった。


「もう二度とこんなことしない、約束する。だけど、俺が言ったことは忘れるな」




静かだ。

この世に二人しかいないみたいだ。




「お前は俺のものだから。誰にも渡さない。それを自覚するまで俺は待つ」



車庫のシャッターが開く音が聞こえた。



「苗、好きだ」