ミステリー

その日の夜。


朋子は、
みり、芽衣、涼子宛の手紙を書いている。


手紙には
いじめにあったことと
いじめをやめてくれと言っても
いじめられ続けてた、
仲間はずれにされたり、
辛く当たられたり、病原菌ウイルスバイキン呼ばわりされたりした
ことが
きっかけで


誰かが、もしかしたら誰もが
自分をいじめやしないか、
とても不安になってしまうこと


また、
生意気呼ばわりされて更にいじめられたせいで
言いたいことを言う勇気がこれっぽちもでなくなってしまったこと、
言いたいことを言うかわりに泣いてしまうという
この上ない悪循環に陥ってしまうこと、
その悪循環を治してくから
これからも仲良くしてくれるかな?

ということを書いた。



誰かと仲良くできるには、
まず自分の事情を
知ってもらったほうがいい、と思ったのだ。
自分がどうして、このような性格に、泣いてしまうように
なってしまったか、
打ち明けないと、相手はわからないだろう。

それから手紙の終わりには、一年前放送していた人気のアニメ「魔法使いグルグル」に出てくる、なかなかユニークで可愛い妖精キャラ・キップルが、リンゴを持っている場面の絵を描いた。
朋子いわく、リンゴを持っているキップルなので、「アップルキップル」という名前を名付けた。
何週間か前、朋子が自由帳に、そのキップルがリンゴを持っている場面の絵をかき、アップルキップルと名付けたのを、
みりと芽衣と涼子が、「面白いしとても可愛い、個性的なキップル」
とほめてくれたので、朋子は三人への手紙の終わりに、そのキップルがリンゴを持っている場面―つまり朋子の名づけではアップルキップルという―を描いた。



ちなみにその手紙に使っている便箋は、
朋子の大好きなアニメ『魔法戦士レイアース』の便箋である。
魔法戦士レイアースには
主人公の女の子が三人出てくるが
三人とも、
誰とでも友達になれて、
人気が高いし、
陽気で明るく美人で
しかも誰にでも親切だ。

朋子は、
その三人の誰かのようになれればいいのに、
と思う。
その三人を敬遠したり、けむたがったりする人は、その三人と、友達になりたくない人は、まずいないだろう。

朋子はその作品中で、
その三人のヒロインを異世界へ読んだ
異世界のプリンセスと、
そのプリンセスを支える
神官(長髪のイケメンなにいちゃん)もかなりお気に入りキャラだ。
そのプリンセス、長い綺麗な金髪のその異世界を祈りと信じる気持ちで平和な世界へと保つ、
その世界の平和を祈る綺麗な美少女だ。

あまりに綺麗すぎて驚くほどだ!
そのレイアースの絵柄自体が綺麗すぎなのだ!



なぜ私はあんな風に
なれないんだろう?
あんな風になりたい、
いや、そこまで贅沢いわないから
その三人のようなマドンナ的存在にまでは、
ならなくっていいから、
せめて、
いじめられることだけは
ない人になりたい。
せめて
いじめられない人でありたい。

レイアースの三人の主人公みたいな
人気者、中心人物、マドンナ、アイドルのような存在には
なんなくていいから。
もちろんそのプリンセスも。


朋子は思った。


一年前の朋子は、
自分とレイアースの三人の主人公を比較し、
なぜここまで自分と、彼女たちは正反対なのだろうと
とてもみじめに感じていた。

そして、朋子は一年前の七夕に、自室で、
魔法戦士レイアースの連載されている少女漫画誌の付録のひとつだった、
魔法戦士レイアースの短冊に
ー魔法戦士レイアースの三人のヒロインが、
浴衣姿で天の川を見つめている、ロマンチックな短冊であった。
そのときの、その少女漫画誌の表紙絵も、背景に天の川や星が描かれている、
レイアースの3人のヒロインたちの浴衣姿の表紙絵だったー
来年のクラスで、魔法戦士レイアースの三人のヒロインのように、なりたい
と、とても切なく悲しい気持ちで書いたのだった。

無理かもしれない、薄い望みかもしれない、とは心の中でうすうす感じていたが、それでもそう書いたのだ。

短冊へ、そのように書いたとき、
朋子は自分へのみじめさと情けなさとから、
すでに半泣き状態になっていた。


朋子は三人あての手紙を入れた封筒を、通学用カバンにしまった。