男はゆらゆらと立ち上がると、契約書を丁寧に折りたたみ、懐に仕舞い込む。

「分かりました。では、こうしましょう。

ケッチャム様の治療費は私共の関連事業団体から寄付させて頂きます。

彼はまだ精神病の治療中でしてねぇ。

それに彼は大事な……、それは大事な患者様ですから、それを治療途中に強引に退院させてしまうには忍びませんので」

ケッチャムの口が一瞬歪み、僕達は目を合わせる。