「知らない……」


私はそう答えるのが精一杯だった。


だって、本当に、彼のこと全く何も知らない。



どうしてあの時、とっさに彼の名前を叫んでしまったのかも分からない。


「知らないって何だよ?」

「本当に、知らないの……」


すると突然、かずにぃは車の窓をドン!と叩く。


「俺が抱いてる腕の中で叫んだ男のことを知らないってなんだよ!」