その少し前。
 真砂は茂みの中で、少し身を起こした。

「……そろそろ刻限だな」

 千代に言われた時間を過ぎても、動きはない。
 真砂は、出来るだけ神経を尖らせて、屋敷を窺った。

「……出るぞ」

 あまりぐずぐずしていて夜が明けても困るのだ。
 真砂はそろそろと、築地塀に近づいた。
 その後ろを、捨吉がついてくる。

 真砂はもう一度屋敷を窺うと、一気に築地塀に飛び乗った。
 すぐに通りに降りる。

 同じく出てきた捨吉と共に、羽月と落ち合う場所に向かった真砂は、その場所の手前で、走ってきた羽月に出会った。
 羽月は真砂に気が付くと、さっと家の陰に隠れた。

「どうした?」

 真砂も陰に身を潜め、羽月に問うた。

「あっちのほうから、屋敷の様子を窺ってたんですがね。ちょっと動きがありまして」

 そう言って、羽月は屋敷の裏手を指差した。

「今さっき、あきさんが姿を見せたんです」

「何だと?」

 答えたのは真砂だったが、その横から捨吉が、ずいっと身を乗り出した。

「え、あきは逃げられたのか?」

 真砂は渋面になって、捨吉を押し戻す。
 捨吉は慌てて身体を戻した。
 が、今にも駆け出しそうなほど、身体が前に傾いでいる。