再び寝所へと戻った千代は、少し安心した。
 先程失神させた男たちは、まだ意識を取り戻していない。

 牢の男と、ここに詰めていた男どもを軒並み失神させるほどの女技だ。
 使うほうも、かなりの負担である。

 震える下半身を懸命に動かしながら、千代は、き、と部屋の奥を見た。
 物音は聞こえない。
 眠っていてくれれば、楽といえば楽なのだが……。

---でも、主の不興を買って、お屋敷から叩き出されるという筋書きのほうが、後々妙な疑いも持たれないかもしれない---

 妹ばかりを寵愛する主に文句を言えば、屋敷から叩き出されるかもしれない。
 そのほうが、堂々と屋敷を出られる。
 多少の疑いは持たれるかもしれないが、そのほうが密かに姿を消すよりも、密書がなくなっていることと千代たちは結びつきにくいだろう。

 だが、危険も伴うのだ。
 悪くすると、その場で手討ちになる可能性もある。

 何と言っても、ここでは千代たちは、身分もない旅芸人だ。
 斬り捨てたところで、不都合はない。

---女技で家老の意識も飛ばしてやろうかと思ってたけど……。後腐れなくするためにも、手討ち覚悟で不興を買うか……---

 きゅ、と胸の前で拳を握り、千代は塗籠の扉に手をかけた。