あきと千代が指令に赴いて、早ひと月が過ぎた。
 その日真砂は、母屋で清五郎と長老らと向き合っていた。

「矢次郎でもわからんか」

 今の今まで目を通していた文を下ろして、真砂が言う。

「あき一人ならともかく、千代までがしくじったとも思えんな。……いや」

 顎を撫でながら、真砂が渋い顔をした。

「難なく寝所に侍ることには成功しても、探っているのがバレたかもしれんな。千代はそこまで無茶はせんとは思うが、あきがぼろを出したのかもしれん」

 千代は今まで、何度となく似たような任務をこなしてきた。
 故に内部を探ることに関しても、慣れているのだ。

 どの程度まで相手を虜に出来たら、どこまでのことが探れるかも、十分わかっている。
 自分で屋敷内を探る場合も、無理だと判断したら無茶はしない。
 捕まったら元も子もないからだ。

 千代の場合は、失敗したら真砂からの褒美が貰えない、というところにあるのかもしれないが。