再び谷を何個か超え、常人には足を踏み出すのを躊躇うほどの急斜面を上ると、突如一軒の屋敷が現れた。

「大分出来てきたな」

 屋敷の周りを巡る築地塀の一角にある門から中に入りながら、真砂は呟いた。
 今はまだ、母屋と東側部分しかない。
 そこに、戦から逃れた乱破たちが寝起きしていた。

 ここが、新たな里だ。
 見かけは一つの屋敷だが、回廊で繋がった部屋は多く、部屋の一つが今までの一つの家だ。
 つまり、一つの大きな屋敷の中に、全ての乱破たちが暮らす形となる。

 捨吉が真砂から蓑を取り、真砂は母屋に入った。
 そこにいた乱破たちが、即座にささっと脇に避け、頭を下げる。

「お帰りなさいませ」

 奥で同じように頭を下げた『中(なか)の長老』が、穏やかに言う。

 母屋にいるのは、大体がまだ若い者たちだ。
 戦で親を亡くした者を中心に、中の長老が面倒を見ている。
 まだ屋敷自体が出来ていないため、夜になればもっと増えるが。

 基本的に人と関わるのを嫌う真砂だが、今は非常事態なため、贅沢は言っていられない。
 家族のある者から部屋を割り当てるべきだとし、真砂も母屋で生活している。